街のパン屋から、売れ残りそうな商品を集めて販売する「夜のパン屋さん」が月に1度、札幌で開かれています。
販売員は、ホームレスの人やシングルマザー。
フードロスの削減と、働く場づくりを同時に目指す新しい取り組みとは。
「開店します。中にお入りください」
「いろんなパンがあるので見てみてください」
先月、札幌・北区の本屋の店先。
月に1度、日が沈み始めた午後4時半にオープンする「夜のパン屋さん」。
この日は食パンやあんぱんなど約60種類、200個を超えるパンがずらりと並びました。
「ありがとうございまーす」
購入した人:「数多くのパンがあってどれも魅力的でした」
購入した人:「初めて来たがつい夢中になって買ってしまった」
ビッグイシューさっぽろ 平田 なぎさ 事務局長:「1か所で色々なパン屋のパンが並ぶので見ても楽しい、買っておいしい。それだけじゃなくて、困っている人の仕事づくりになる。フードロスの問題を解決したい」
パンの廃棄を減らし、働く機会を同時につくる、夜のパン屋さんの取り組みとは。
夜のパン屋さんは、札幌で生活困窮者を支援する団体が運営しています。
札幌や近郊のパン屋から、その日に売れ残りそうなパンを買い取ることでフードロスの削減を目指し、パンの販売をホームレスの人やシングルマザーに担当してもらうことで働く機会を作ります。
客は様々な店のパンを知るきっかけになり、それぞれがメリットを得られる仕組みです。
「こんにちは~夜のパン屋さんです。受け取りに来ました」
すぎうらベーカリー 小澤 糸貴子 マネジャー:「16セット用意させてもらいました」
札幌・中央区のすぎうらベーカリー。
本店を北海道・美唄市に構え、米粉をふんだんに使った商品が人気のパン屋です。
この日は、メロンパンや総菜パン、スコーンなどの詰め合わせを用意しました。
小澤さん:「マルシェのようなかたちの夜のパン屋さんとして違う客に販売してもらえるのはありがたいです。ひとつの意味合いだけではなくて、働く場の提供、客が(パンを)選ぶ楽しさに私たちにも協力できればということですぐに返事をしました」
夜のパン屋さんがこの日買い取ったパンは、札幌と石狩市のパン屋など合わせて、8店舗から57種類、211個。
一つずつ中身を確認して値札を貼っていきます。
「山の手ラウンドオレンジ…」
今回、初めて販売を担当する女性がいます。
中学生の子ども2人を育てるシングルマザーです。
普段はWEB制作の仕事をしていますが、子育てとの両立で社会から置いていかれるような閉塞感に苛まれることがあり、顔の見える関わりができる接客の仕事に手を上げました。
運営団体の平田 なぎさ 事務局長は、こうした人たちが働ける場所をつくっていきたいと考えています。
ビッグイシューさっぽろ 平田 なぎさ 事務局長:「(夜のパン屋さんは)一つのイベントで色々な目的が果たせる。目的のためにみんなで協力してやっていこうという気持ちがあれば、うまく回っていくと思う」
日が沈み、寒さが厳しくなるなか開店した夜のパン屋さん。
店の外にまで長い列ができました。
訪れた人:「学校からの帰り道で、すごく並んでいてオシャレそうな雰囲気だった。1600円分、買っちゃいました」
訪れた人:「聞いたことのないパン屋さんの名前もあった。これを機会にいろんなところに行きたいと思った」
200個以上用意したパンは、約1時間で完売しました。
スタッフ:「完売でーす」
販売担当したシングルマザー:「楽しかったですね。ライブ感がある。たくさんの人に来てもらえてうれしかった」
まちのパン屋さんから夜のパン屋さんへ。
フードロスの解消と働く場所づくりの取り組みは、始まったばかりです。