「このままでは自己破産するしか…」高級食パン「乃が美」運営会社にフランチャイズ店オーナー有志が“要望書”を提出
12/1(木) 11:12配信
文春オンライン
『高級「生」食パン』と銘打った高級食パンの専門店を全国に展開する「乃が美」。経営難に陥った同社のフランチャイズチェーン(FC)店舗の複数のオーナーが有志の会を結成し、本社にロイヤリティ引き下げを申し入れるなど声をあげていることが「 週刊文春 」の取材でわかった。 【写真】FCオーナーたちが「乃が美」に提出した要望書
FCオーナー「このままでは自己破産するしかない」

有名人御用達の高級食パンとして知られる「乃が美」(公式ホームページより)
乃が美といえば、有名人御用達の高級食パンで知られる。 「元雨上がり決死隊の宮迫博之や俳優の哀川翔、お笑いコンビ・かまいたちの山内健司、SPEEDの上原多香子らが乃が美のパンがお気に入りだと公言しています」(フードライター) 乃が美の食パンは、小誌が2021年2月に報じた菅義偉首相(当時)の長男による総務省の高級官僚接待問題でも登場。東京・六本木の小料理屋での会食後に菅首相の長男が総務省の官僚に手渡した手土産が、乃が美の食パンだった。 そんな乃が美で“異変”が起きている。 FCオーナーが窮状を語る。 「この30カ月ぐらい、12月の繁忙期を除きずっと赤字が続いています。にもかかわらず、乃が美ホールディングスと、同社に出資するファンド『クレアシオン・キャピタル』が本部の収益を維持するため、FCオーナーから徴収するロイヤリティを下げようとしないのです。経営に行き詰まり、『このままでは自己破産するしかない』と考えるオーナーが相次いでいます」
2013年に前社長の阪上雄司氏、現社長の森野博之氏らによって創業した乃が美。「トーストしなくても耳まで口溶けが良い」という食感が人気を集め、大ヒット。2018年には全国100店舗を突破し、売上は100億円を超えた。 躍進を支えてきたのが、社内用語で「はなれ」と呼ばれる加盟店舗=FC店舗だ。約230店舗のうち、直営店はわずか16店舗。大半の店舗がFCなのである。 2019年には、同社の経営面に大きな変化があった。東京の投資ファンド「クレアシオン・キャピタル」から出資を受け入れたのだ。 「『クレアシオンとともに上場を目指す』とぶち上げた。発案は森野氏。阪上氏がそれに乗った形です。当時、乃が美の株主比率は森野氏と阪上氏で半々でしたが、2人は保有する株の約半数をクレアシオンに譲渡。それぞれ20数億円の売却益を得たと聞いています」(同前) ところがこの頃、乃が美のパンの売れ行きに陰りが見え始める。翌2020年からはコロナ禍に突入し、店舗の売上は落ち込んでいく。FCオーナーにとっては、本部に支払うロイヤリティが大きな負担となっていた。
FCオーナーたちが要望書を提出するも…
「当初、ロイヤリティは売上の10%という契約でした。でも、売上が減る中、これを支払うと赤字になってしまう。本部とロイヤリティの引き下げ交渉を行ったのですが、『本部の収入が下がると、上場に差し支える』という理由で応じてもらえませんでした」(同前) 経営陣に対して不信感を募らせていくFCオーナーたち。そして2022年2月、FCオーナーたちは「はなれの会」と称する団体を結成。本部に対して、ロイヤリティの減額や経費の削減を求める要望書を提出するに至った。しかし、 「本部からFC店舗にロイヤリティ分の資金が一度だけ補填されましたが、結局、10%という割合は変わりませんでした」(署名に応じたFCオーナー) その後、社長を務めていた阪上氏が3月31日付で退任。食パンの開発者ら創業メンバーも次々と退社。“乃が美の創業の味”を知るメンバーは去り、会社には現社長の森野氏とファンド出身者らが残る形となった。
乃が美ホールディングスはどう答えたか
乃が美ホールディングスに質問状を送った。 ――FC店舗はほぼ全店が赤字の状態だと聞いているが。 「FC加盟店の財務状況につきまして、FC契約上の秘密保持義務があるため、お答えすることができません」 ――ロイヤリティの引き下げを行っていないのは事実か。 「ロイヤリティにつきまして、FCオーナーと個別に面談を実施し、ロイヤリティ対象商品の見直し、販売方法に応じたロイヤリティ料率の引き下げ、ロイヤリティの支払いサイトの延長、ロイヤリティ支払いの一部免除等の施策を行うことにより、FCオーナーが支払うロイヤリティの金額は従前と比べて軽減されております。また、希望するFCオーナーに対して、まだ出店をしていないエリアに係る加盟金の返金や本部による販売促進費の負担等の施策も実施しております」 ――食パンの開発メンバーが会社を離れ、オリジナルのパンの味を知る人材がいないというのは事実か。 「乃が美の食パンのレシピは弊社の金庫に厳重に保管されており、また、製造方法もマニュアル化されており、どの店舗、どの人材が製造しても統一した味、品質の食パンを製造することが可能であります」 高級食パン専門店チェーンで今、何が起きているのか。 現在配信中の「 週刊文春 電子版 」では、乃が美が大ヒットした経緯、複数のFCオーナーが明かす窮状、FC店舗を出すためにかかる費用、元役員が明かす退任の経緯、会社を去った“食パン開発者”が呈した苦言、現経営陣とファンド側の主張などを詳しく報じている